GAMO KANSAI WEB MAGAZINE

販促・ブランディング

ガモウニュースVol.79 撮影の舞台裏☆vetica内田 聡一郎氏

Editor

梅村 直顕

2017.02.09 Thu

GAMO NEWS Vol.79、お手元に届き始めていますでしょうか。
今号のテーマは、「It Girl(イット・ガール」。
カバー&グラビアページの撮影を手がけられたのは、veticaの内田 聡一郎氏です。
現代アートのインスタレーションのようでもあり、映画の一場面のようでもある、ストーリーやメッセージ性を感じさせる素敵な作品。
皆さまそれぞれの解釈でお楽しみください!

vetica 内田 聡一郎氏がイメージする“It Girl”とは

「It Girl」は、本来、誰かを指して成立する言葉です。今回、お題をいただいた時、最初は自分の中のIt Girlやミューズを探してみたのですが、今、そういった人があまり想い浮かばなかった。それならば、特定の誰かを模倣したり、インスパイアしていくような作り方はちょっと違うかなと思ったのです。

今はインターネットやソーシャルネットワークが発達していていることで、It Girlが見出されやすく、尚且つ、It Girlの定義がすごく広くなっているなと感じています。昔ほどひとつのメディアに出続けて、押しも押されぬ「時代の顔」というのが、今の時代は逆に作りにくい。今、この人が有名という人もいますが、それは一過性で、消費されるスピードがすごく早くなっているのも時代の特性なのでしょう。

It Girlは、今の時代にとってある種、死語。

そう感じた僕は、誰かを指す言葉をあえて逆手にとり、「匿名性」をテーマにしよう。さらに4つの作品の流れでストーリーを感じさせるものにしたいと思いました。

表紙とコンテンツでは、顔を隠し、“誰でもない”逆に言うと“誰かの可能性がある”という、想像力を掻き立てる作品に。見開きのページでは、顔を半分出し、“これは誰かなのか?”と感じさせるような作品にしました。

今は、誰しもがIt Girlになれる可能性があるし、誰しもがIt Girlを経験していく。そのスピード感のようなものを感じていただけたらと思います。

【FrontCover】



【Contents】





カット・カラー・スタイリングのポイント

カットは前日と当日に行い、前髪のニュアンスは、現場で花とのバランスを見て決めました。 顔を全面隠すというのが基本なので、両スタイルとも抜け方が気持ちの良いショートバングのデザインにしているのがポイントのひとつです。




どちらも少し赤紫系のポイントカラーを入れています。 これは気分的なものですが、メインで使う花が紫や青が多いので、そのバランスもあります。業界的に僕の強みはカラーデザインという印象があると思うので、今回の作品でも自分らしさを出してみました。

表紙と見開き(右)のスタイルですが、ベースはラウンドのショートで前髪は潔く眉上で短くしています。基本的には前上がりのショートデザインにして、後はスタイリングで遊びをつけ、少しウェッティーにしました。




コンテンツと見開き(左)のスタイルは、ベースはミディアム。鎖骨レングスぐらいのウルフです。ショートバングに合わせてしっかりとレイヤーを入れて、毛先に動きを作り、すずらん型のシルエットになるようにしたバングデザイン。ウエイトが低い重めのデザインにするよりは、少しレイヤーが効いていて動きがあるようなヘアが気分だったので、両方ともレイヤーをしっかり入れたデザインにしました。




メイクも現場で調整しました。シンプルですが、実は結構、アートメイクをしていて、眉毛やシャドーのセレクトは色味で遊び冒険をしています。



花を効果的に使ったクリエイション

ヘアスタイル自体は多少デザインしているとは言え、割とリアルヘアというかシンプルを意識していましたし、背景もシンプルなものをイメージしていたので、ちょっと色味というかアクセントになるものがほしいと思ったのが花を使った理由です。

花のクリエイションは過去に何回かやったことがあるのですが、今回のように顔を隠すというのは、ビューティー雑誌では基本的にNGな場合が多いので、自由度の高い媒体でやってみたかったことでした。

スタッフに材料店で造花を買ってきてもらい、細かい指示はせずに組み合わせてもらったものを、本番で配置や色のバランスの気持ち良いところを探しながら調整していきました。





準備は7割。3割の余白を持って撮影に臨む

撮影は前もって7割決めて、3割の余白を作ることをすごく大事にしています。10割決めていってしまうと良い作品が作れないというのが経験上あるからです。
 
今回は、屋上を使って背景を空抜きにしようと思っていたのですが、あいにくの雨で室内での撮影になりました。しかし、結果オーライ。白の空間にしたことで、より匿名性が強まった感じがしています。

3割の余白部分で、背景だけでなく、現場で衣装も変え、ポーズも探りながらやっていきました。こうした現場での即興力がとても重要なのです。

フラットに構えておいて、不測の事態が起きた時は、“逆に楽しむ”ほうがいいのかなという気がしています。でも、その代わり、普段の生活の中で色々な「創造」をストックしておき、切り替えが必要な時に、引き出しの中からバーンと出せるように心がけています。



トータルディレクションをすることが大事

僕は、空間の表現をとても意識しています。

今回の作品で言えば、余白部分は、今を取り巻く世界のフラットな感じをイメージし、“そこにいる”という佇まいを出すための仕掛けです。 僕が思う、今の時代の流れって、ビューティーもそうだし、ファッションもそうだけど、結局はライフスタイル重視。ライフスタイルにおいて自分自身が何を大事にしたいのか、どういう生き方をしたいのかという中でのファッションであり、ビューティーなので、ライフスタイルというか全体的なイメージを空間で表現できたらいいなと思いました。

これを人物に寄ってしまったり、ヘアにクローズアップすると、どうしてもヘアスタイルが説明的になってしまいます。ヘアの業界誌ではあるのですが、髪に対しての印象を見せたくなかったというのがありますね。

どの仕事をする時でもそうなのですが、空間の表現はもちろん、ファッション、写真など、トータルディレクションをするという意識は自分の中で大事にしていることです。

また、そういった意味でも、カメラマンと作り手のコミュニケーションは一番大事。カメラマンの見ている最終形と僕が見ている最終形のフィーリングが合わないと、どれだけ自分が頑張っても良いものは作れない。逆に言うとクリエイションはカメラマン次第ですね。だから、一緒に仕事をするカメラマンは限られています。


リアルだけど、どことなく非現実感のある作品に

毎回、クリエイションをする時に、コンセプト自体は説明的であっても、パッと見た印象で「あれ、コレなんだろう?」という感じの“引きを作る”ということはすごく意識しています。

最近、若い美容師さんにおいては、美容業界誌を食いついて見る人が少なくなってきています。今は、リアルだったり、ソーシャルネットワークの中でヘアスタイルのビジュアル表現を探したりしてくる人たちが多く、あまりにも非現実的過ぎるクリエイションは僕も今の時代の肌感には合わないと感じています。

だからこそ、僕自身は、リアルヘアを追求して、リアルだけどどこか非現実的なものを組み合わせていくクリエイションを比較的続けてやっていて、今回もリアルヘアだけど、絵として見た時「あ、なんか気になる」みたいな感じが出せたらいいなと思いました。

僕は他業界の人とコミュニケーションを取ることが多いのですが、今まで「美容師って説明的なクリエイションが多いから、なんかやり過ぎていてダサいよね」ということを言われがちでした。クリエイションから“ファッション”が感じられないということです。なので、僕は、美容師さん以外の人が見た時にも、ヘアのことはわからないけど、単純に「キレイだな」とか「素敵だな」と思われるようなクリエイションを目指しています。

若い美容師さんへメッセージ

若い美容師さんを見ていると、最初から力が入り過ぎてしまっている。クリエイションってすごく崇高なものだから、自分みたいな人間はできないとか、自分のキャリアじゃまだ無理だと考えている人も結構います。

でも、なんだっていいと思うのです。何かやったものがクリエイションになる。肩肘張らずに、まずは“やってみる”こと。クリエイティブのクオリティーを求めることは二の次として、やってみて、右往左往していくことが大事なのです。

今回、花を作ってもらったスタッフも、造花を組み合わせてお面のようなものを作るなんて、初めての経験でした。そうしたスキルは誰かに習うわけでもありません。自分で気持ちの良いバランスを探すのです。そうしたことを重ねていくうちに自分のスキルが溜まっていき、自分でやり遂げた感が芽生えるのです。教えたことしかできないというのは、僕は違うんじゃないのかなと思います。

自由な発想で、まずは“自分が楽しんで”クリエイションにトライしてみてください!




COVER LOOK BY
SOICHIRO UCHIDA_ vetica

HAIR & MAKE-UP/SOICHIRO UCHIDA(vetica)
MAKE-UP&FASHION STYLIST/YOKO KAYAMA(vetica)
ASSISTANT/KAITO KINJO,OUSUKE YAMAURA,ANNA ITO(vetica)
PHOTO/YOHEI KICHIRAKU

Profile
内田 聡一郎
1979.8.30生まれ。神奈川県出身、美容室1店舗を経て、VeLO オープニングスタッフとして参加し、店長兼ディレクターを経た後、 2009年にVeLOの姉妹店となるveticaのクリエイティブディレクタ ーに。サロンワークをはじめ一般誌から業界誌、セミナー、数々のミ ュージシャンやアイドルのヘアメイク等、幅広く活躍。2015年には 同店が移転拡張し今後さらなる活躍が期待されている。またプライ ベートではDJ活動もしており、都内クラブでの活躍も見逃せない。
  

Editor

梅村 直顕

ガモウ関西 デザイン室 室長 / ディレクター。ヘアサロンからメーカー、社内広報物のWEBとグラフィックのディレクション・デザインに従事。

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